写真家・フォトグラファー:鈴木洋見公式ホームページ「わたりがらす」 トップページに戻る 鈴木洋見にメールを送る

昔、旅に出ればそれだけで何かを得て、成長し大きくなれると思っていた。しかし長い旅をして気づいたことは、旅それ自体は何も与えてくれないという事だった。どこどこに行って、何々を見たということだけではなく、それを見て、感じ、考え、そして心の奥底に何かが生まれ、自分自身が変わっていくことが大切なのだと気づいた。

渇いた大地、水を求めて何時間も歩き続け、ようやく手にしたわずかな水が喉を流れ落ちていく時に感じる充足感、でっかい夕陽を見て言葉より先に涙が頬を伝う時の心の震え、どこまでも続く一本道をバイクで走っていて突然、象と遭遇した時の心の躍動、生きていくために鶏の喉にナイフの刃をあて、掻き切る時に手に伝わってくるゴリゴリとした感触、命を絶つ瞬間に気づいた ”生かされている” という実感。
まるで、肉体を構成する60億の細胞の一つ一つが目覚め、呼吸していく感覚。そう言った身体が震え、心で感じた一つ一つが心を豊かにし、人を変えていくのだろう。
もちろん海外に出ることだけが旅ではなく、旅はいつでもあなたの心の中にある。 しかし、帰って来る度に日本で感じることは、とても不自然ですごく無駄が多いということだった。

一つには、人の”死”はもちろん、人間の食料として命を奪われていった牛や豚、鳥や魚に至るまでの”死”を隠しすぎる。 だから逆に“生きる“ そして ”生かされている” というリアリティーを感じる事ができないのだと思う。
集団自殺や幼児虐待など最近この国で多発するこれらの事件なども、テレビゲームや映画の中でのバーチャルな世界でしか生死を知らない子供達が増えたからではないだろうか?!一昔前、僕が小さい頃でさえ山へカブトムシを獲りに行ったり、田んぼへザリガニを捕まえに行ったりと自然と遊び無意識に自然から学んだ ”人も自然の一部” という感覚は、今は遊ぶための自然も減ってしまったこの国では失われつつあるように感じてしまう。

また、世界の貧しい国では食べ物を求めて彷徨い、ゴミの中に埋もれて死んでいく子供達がいる一方で、毎日のようにこの国で処分されていく食べ物のゴミの山を見ると心が絞めつけられる思いがする。自動販売機にコインを入れる手が止まり、今どこかで流れているもう一つの世界が頭を過ぎる。それはたった1本の缶ジュースで消えていく微々たるお金で、救えたかもしれない命を僕は幾つも見てきたから。

知識だけではなく経験を
バーチャルではなくリアルを
不自然なものを自然に ......

これから未来を担う子供達には、そう言ったものが大切なんではないでしょうか?
人と向き合い、自然と向き合って見えてくる自然の一部としての本来の自分の姿。そんな自分と向き合い、たくさん会話をして、自分を知るためのチャンスと時間を旅は与えてくれる。
だから僕は旅に出るのです。

" Life is great journey. "
" Journey is great life. "